個人事業の「開業費」

2024年04月17日

 今日は個人事業の「開業費」について書きます。

 これから起業されるかた、起業されたばかりの方はぜひ読んでみてください。

 個人事業主にかかる税金は所得金額を基に計算します。

 所得金額というのは収入(売上)から必要経費を引いた金額です。 

 事業を行うにあたって要した費用はその年の必要経費となりますが、事業を始めるまでにかかった経費については「開業費」という項目で特別な会計処理をすることになります。

1 開業費とは

 開業費は「開業のために特別に支出した費用」ということになっていますが、何が開業費になるかという細かい規定はないので、事業を始めるために支出したものであれば、一部のものを除いて開業費にできます。
 開業費にならないものについては、あとで書きます。

 開業費になる主なものとして次のようなものがあります。
 ・事業に必要なパソコンの購入費
 ・名刺の作成費用
 ・ホームページの作成費用
 ・文房具や備品の購入費用 
 ・打合せ費用

 事業を開業するまでに支払ったものが開業費になります。

 開業費にならないものとしては次のものがあります。
 ・10万円以上のもの
 ・敷金・礼金
 ・商品の仕入代金

 10万円以上の器具・備品、車両、店舗の改装費などは固定資産になり、「減価償却資産」としての会計処理をします。

2 開業費は「繰延資産」

 開業費は会計上「繰延資産」になります。

 繰延資産というのは、支払った金額を全額その年の経費とはせず、その効果が続く間何年かにわたって必要経費に入れるというものです。

 開業費の繰越資産としての償却は会計上5年均等償却とされていますが、税法上は任意償却となっていてどの年にいくら経費にするかは自由です。
 開業費が100万円かかったとして、事業を始めて最初の2年は赤字で3年目に500万円の利益が出た場合にその年に100万円を経費に入れるといったことができます。

3 いつからいつまでに支払ったものが開業費になるか

 開業費になるのはいつからいつまでに払ったものなのかという、はっきりした規定はありません。
 開業準備のために支払ったことが明らかなものであれば開業費になります。
 開業5年前に購入したパソコンや1年前に参加したセミナー費用でも事業を始めるために買ったことを証明できれば開業費になります。
 それを証明するためには、領収書やレシートが保存してあることに加えて、それが開業のために使われたことが第三者に説明できる必要があります。
 ただし、何年も前に支出したものを開業のために支出したと証明できることはほとんどないでしょう。

開業費を使った節税

 開業費をいつ償却するかは自由ですので、赤字の年には償却せず、利益があった年に必要経費に入れることで利益調整ができ、高い節税効果が得られます。

 また、償却期間は5年間となっていますが、必ず5年以内に償却しなければならないという規定はないため、6年目7年目でも、大きく利益の出た年に償却するということが可能です。

 何年もたってから償却する場合には、それまでの年分で必要経費に入れていないことがわかるよう書類を保存しておく必要があります。

 事業を始める時には、最初に知っておくことで税金や資金繰りの面で有利になる方法がいくつかあります。

 開業費もどのような使い方をするかでメリットが大きくなったり小さくなったりします。

 開業の際には専門の税理士に相談されることをおすすめします。